Mottyの旅日記 Archive

Mottyが巡った場所の記憶と記録

小森温泉

 吉備高原は、地殻運動の活発な動きによって隆起し、それらが削られて準平原と呼ばれる高原地形となった。この高原の中には、過去の火山活動の痕跡もあり、そのためか、高原の中にはあちらこちらに温泉が湧き出ている。

 小森温泉もそれら多くある温泉の内のひとつで、伝承では、鷲がここで傷を癒して飛び去ったことから発見されたといい、源泉の近くに古くから薬師堂があったことから、病を治す霊泉として知られていたようだ。

 湯治場としての本格的な開発は江戸時代で、享保17年(1732)に岡山藩主池田継政の命によって開発が始まり、延べ1万人もの人夫が投入され、石垣で囲んだ湯屋が藩営の湯治場として整備された。しかし、温泉に湧水が混ざり込んで温度が下がってしまったため、数年で寂れてしまったという。

 その後、昭和28年(1953)から翌年に掛けて、地元民によって再開発が始まり、ボーリング調査で良質かつ湧出量ある湯が確認されたため、復興された。現在も温泉だけではなく、温泉旅館としても営業している。

 泉質は、基本的には近隣の湯の瀬温泉とほぼ同じで、アルカリ性単純泉であり、浴槽には湯の花も見られる良い湯だ。ただ、湧出温度も28.1℃とほぼ同じであるため、加温されているはずである。アルカリ性の温泉らしい、ぬるつく浴感があり、お肌のケアを重視する人には、喜ばれる温泉だろう。

 小森温泉には、小森温泉旅館とラーバニスト小森の里という2軒の宿があり、両方とも外湯として利用できるらしいが、自分が訪れたのは温泉旅館の方だった。昭和の湯治宿という雰囲気が抜群に漂っている建物の中に入ると、長い廊下を経て浴室がある。浴室は地下に入るような感じで階段を下りていくのだが、近くを流れる川と高さは変わりなく、浴室から川のせせらぎを聞くことができ、広さはそれほどないものの、田舎の鄙びた温泉という趣が非常に良かった。由緒ある古さではなく、昭和的なレトロ感を味わうにはもってこいの温泉である。

 

最終訪問日:1998/8/7

 

 

訪れたのはまだ平成の前半の頃で、昭和がそれほど遠くない時代でしたが、それでも昭和感を抜群に感じました。

詳しく言うと、昭和中期感、昭和30年代感ですかね。

変な方向にリニューアルせず、今後もレトロな雰囲気を大切にしてほしい温泉です。