吉岡温泉の歴史は古く、発見は平安時代の応和2年(962)のことと伝わる。
伝承によれば、その頃、この辺りに住んでいた葦岡長者の娘の顔に、悪瘡が出来てしまった。そこで長者は、日頃から崇拝している薬師如来に平癒祈願をしたところ、薬師如来が田から湧き出る湯で顔を洗いなさいと告げ、そのお告げに従って長者が温泉を発見し、顔を洗った娘の悪瘡は治ったという。
以来、1000年に渡る温泉地として知られ、戦国時代には、九州は鹿児島の戦国大名島津氏の一族である島津家久が、京から薩摩へ帰る途中に立ち寄ったことを日記に記している。また、江戸時代には、鹿野藩主亀井茲矩が温泉を掘削しているほか、後には因幡を治めた鳥取藩池田家も湯治場として利用した。
吉岡温泉の泉質は、弱アルカリ性の単純泉で、当然ながらあっさりとした浴感である。ただ、湧出温度が高く、50.8℃もあるため、掛け流しとなっている浴槽の湯温は、常にかなり熱い状態だった。温泉に入りに来たのに、温泉が熱過ぎて水で薄めて冷まさないと入れないというのは、なんとも贅沢に過ぎるような気もしたが、それもまた吉岡温泉で味わえる贅沢さといったところだろうか。
温泉街を歩いてみると、もう廃業してしまった旅館も幾つかあるようだが、それでも足湯があったりと、温泉町としての風情はきちんと残っている。中心を流れる小川沿いに、昔ながらの公衆浴場が2軒あり、高級温泉旅館が建ち並ぶ有名どころとは違った、庶民的な趣があるのも、吉岡温泉の良さのひとつだろう。
温泉街は、端から端まで歩いてもすぐの大きさなのだが、気負わずにブラブラと散歩するにはちょうど良いぐらいの通りの長さだった。このような、隠れ家的な雰囲気の温泉街ということもあって、構えずに逗留することができ、非常にリラックスできる温泉である。
最終訪問日:2013/5/12
ホテルが立ち並ぶような有名どころの多い鳥取県では、ちょっと隠れ家的な温泉ですね。
それでも温泉街の風情は十分で、のんびり散策しても愉しい温泉でした。
機会があれば、吉岡温泉を基地に自転車で湖山池を一周したいですね。