Mottyの旅日記 Archive

Mottyが巡った場所の記憶と記録

白鬚神社

境内の鳥居をくぐって見る湖上の鳥居

 近江最古の神社といわれ、全国の白髭神社の総本社でもある。

 具体的な創建時期は不明だが、古代の鎮祭創建に始まるといわれていることから、その起源は、有史以前と言ってもいいほど遡るのだろう。社記によれば、垂仁天皇25年(紀元前5)に倭姫命が社殿を再建したとあるから、それ以前にも社殿はあったということになり、あくまで真偽のほどは不明ではあるものの、相当古くから神社としての体裁を整えていたようだ。ただし、延喜式に記載された式内社ではないため、記紀にだけ記録の残る国史見在社である。

 この神社の祭神は猿田彦命で、天孫降臨の神話では、その道案内の役割を果たした神であった。記紀の記述からは、屈強な軍神のようであるが、民間信仰道祖神として祀られているところもあることから、一昔前の庶民にとっては、意外と身近な神様とも言えるだろうか。この白鬚神社では、猿田彦命は白髪白鬚の老人として祀られ、長寿の神様であり、その姿が神社の名の由来にもなった。

 白鬚神社には、別名として比良明神という名があるが、この明神は後背にある比良山系の神様らしく、天武天皇の白鳳2年(674)に明神の号を賜ったのがその由来である。また、白鬚神社で有名なのは湖水に建つ鳥居だが、湖側が正面となることから、もともとは住吉神社のように水神を祀っていたものだろう。つまり、古代民衆の自然崇拝としての水の神と山の神の性格が神社には残っており、この2つがもともとは別の神だった可能性も高そうだ。漁民から見た水の神と、陸上の民が崇拝する山の神が習合し、猿田彦命の姿として祀られたのかも知れない。

 現在の神社は、水上の鳥居と境内が国道に分断されてしまっているが、社殿から見える鳥居は、背景の琵琶湖の雄大な景色もあり、歴史と荘厳さを感じさせる。ただ、湖上の鳥居は、鎌倉時代には陸上に在り、後に琵琶湖の水位上昇によって水中に建つようになったと伝わっていたもので、水上で復元されたのは昭和56年(1981)と、意外に新しい。

 神社の大きさとしては、全国の白鬚神社の総本社と考えればやや規模が小さいようにも感じられるが、慶長8年(1603)に豊臣秀頼によって造営された社殿は重厚で、湖の景色と相まって、こちらもなかなか趣があった。最近は、水上の鳥居が人気のようで、観光客も多く訪れる神社となっている。

 

最終訪問日:2001/8/24

 

 

訪れた頃も、滋賀県の観光ガイド本には載っていましたが、今は、より人気のようですね。

境内の先は交通量の多い国道ですので、くれぐれもご注意を。