Mottyの旅日記 Archive

Mottyが巡った場所の記憶と記録

寝覚の床

 木曽川の上流、木曽駒ヶ岳の西側にある木曽谷の名勝。木曽八景のひとつ。

 名前の由来は、浦島太郎が竜宮城から帰った後、知り合いもおらず寂しさに耐えかねて旅に出、この場所で竜宮城を思い出しながら玉手箱を開け、老翁となって夢から覚めたという伝承から、この地が寝覚と呼ばれ、床を敷いたような岩を寝覚の床と呼ぶようになったという。

 また、三返りの翁という伝説も伝わっている。遥かなる昔、この地に長寿の薬を売る翁が千年に渡って住んでおり、翁は3度若返ったことがあったことから、三返りの翁と呼ばれた。この翁は、医王仏が姿を現したものという。

 このほか、寝覚の床に橋を架けられないという話や、乙姫の椀貸しの伝説なども伝わっており、相当な昔から景勝地として知られていたようだ。

寝覚の床を展望台から眺める

 寝覚の床では、長い間に渡って木曽川の水に洗われた花崗岩が侵食されて滑らかな表面をもつ岩塊となり、箱状に綺麗に割られたようなその岩塊の間を縫ってエメラルドグリーンの澄んだ水が流れ、木曽谷のイメージを象徴するような景観ができあがっている。

 かつては木曽路きっての名勝として知られ、各岩には、床岩、獅子岩、大釜、小釜、屏風岩、硯岩、腰掛岩、烏帽子岩、象岩といった名が付けられており、旅人は必ず足を止めて眺めたという。ただし、昭和43年(1968)に完成した木曽ダムの運用によって水位が下がる前は、急流の場所であったといい、現在は景観は比較的新しいものののようだ。

寝覚の床の案内板

 地質学的には、約1万2千年前に露出した花崗岩が方状節理という割れ目によって直方体に分かれ、その上を木曽川の流れが浸食した地形とされる。この侵食によって露わになった方状節理や甌穴と呼ばれる浸食された穴は、地質学的にも非常に貴重なものという。

 寝覚の床の辺りの国道19号線は、木曽川からはかなり高い場所を通っているため、寝覚の床を見ようとすれば、通常は断崖上の展望台から眺めることになるが、この展望台近くから川そばへ下りられる長い階段も設置されており、下りた先には寝覚の床美術公園がある。ただ、階段が相当長いため、ある程度の体力が必要だろう。また、この展望台と公園の間には鉄道が通っており、一瞬ではあるが、電車に乗りながら見ることも可能だ。

 

最終訪問日:2012/10/12

 

 

木曽谷の道路も鉄路も、ずっと木曽川の情景を見て愉しめるんですが、この寝覚の床の辺りはちょっと異質ですね。

それまでが山の斜面と木々が主役のような感じですが、ここだけは川と岩が主役になります。

その空気の転換が、名勝たる所以ですね。